[ オピニオン ]
(2017/9/28 05:00)
ひさびさに新潟市の繁華街、古町を歩いて驚いた。休日の午後というのにアーケード街は閑散とし、本州の日本海側最大の地下街は買い物客よりも店員が多かった。
相葉英雄さんの小説『震える牛』(小学館)に、娘の住む新潟を訪ねた主人公の男が「古町に行けば大体揃(そろ)うよな」と問う場面がある。「古町はシャッター街になりつつあるの」と答える娘に、男は「全国どこでも顔が見えない街になった」と嘆く。
新たに郊外にできた大型スーパーに客を奪われたのだろう。百貨店が閉店し、映画館や東京資本のファッションビルも撤退。学生時代に一日中遊んだ街から、すっかり活気が消えた。
目抜き通りを外れたあたりに人の波ができていた。古民家をそのまま売り場にしたような小さな店が軒を連ね、手ぬぐいで包んだコメや歩きながら飲める米麹飲料などを売っている。包装や飲み方が違うだけで、見慣れた地元産品が新鮮に思え、買いやすい。どれも若い経営者の発想という。
経済産業省は地域特性を生かして付加価値を生む「地域未来牽引企業」2000社を初選定する。地元経済の大黒柱や将来のリーダー役が期待される企業が対象。新しい発想と個性で新風を吹き込む企業を選んでほしい。
(2017/9/28 05:00)