[ オピニオン ]
(2017/10/6 05:00)
国産の農水産品や食品の国際競争力を高めるツールとして、日本農林規格(JAS)への期待が増している。改正JAS法を活用し、海外取引の円滑化や輸出強化を図りたい。
JASは1950年に制定以来、国内市場に出回る農水産品や食品の品質、仕様の基準となってきた。ビジネスでは品質管理、調達の基準として浸透しており、海外取引で商談の手段として活用されることも多い。
今夏に行われたJAS法改正は、輸出促進に向けて規格を戦略的に活用できる枠組みを整備し、国際化を推進するのが目的だ。従来はモノの品質だけだった規格の対象を、モノの生産方法や試験方法、事業者による取り扱い方法などに拡大した。
これにより、食文化や商習慣が異なる海外市場で、品質の規格化だけでは表現しきれない製法技術や事業者の取り組みといった特徴を「強み」として打ち出すことが可能になる。
例えば海外でも人気がある抹茶。この人気にあやかり、質の劣る茶葉を粉末にしただけの製品が、海外で抹茶として流通している事例があるという。
日本茶業中央会の定める抹茶の定義は「覆下栽培した茶葉を揉まずに乾燥した茶葉(碾茶)を茶臼で挽いて微粉状に製造したもの」。こうした伝統的な製法をJAS規格化することで、本物と類似品の差別化が図れるというわけだ。
農林水産省はJAS法改正と併せて、農産物などの政府間組織であるコーデックス委員会や国際標準化機構(ISO)に採用を働きかける考えだ。日本発の国際規格により競争力を強化するシナリオを描く。
農水産品や食品分野でも「日本製だから高品質」という考え方は通用しなくなっている。海外で知られていない食品の説明の後ろ盾として規格を用いることで、安全・安心な製品であることを担保できる。
2020年東京五輪・パラリンピックで日本食材を広くアピールすれば、輸出拡大に弾みがつく。事業者、産地・地域の提案を十分に反映する官民連携の体制づくりを求めたい。
(2017/10/6 05:00)