[ オピニオン ]
(2017/10/12 05:00)
コメ輸出量を2019年度に16年度の4倍強、10万トンへと拡大を目指す農林水産省のプロジェクト。ヒアリング段階で、民間の輸出業者と農業協同組合の意識の差が表面化した。
「現地に比べて3倍以上もある価格差をクリアしないと難しい」と話す輸出業者に対し、農協は「(農家が)再生産可能な価格水準でないと長続きしない」と主張する。農業者側には価格競争力という視点が抜け落ちている。
「日本の農産物はおいしくて安全。手間もかかっている。だから高くて当然だ」と主張するのは簡単である。しかし輸出先の消費者だって、価格差が大きければ購入をためらうはず。コメ以外の農作物に関しても同じ問題がある。
外国の農業法人や企業も安全性や品質の向上に力を注いでいる。GAPなどの食品安全認証の取得率は、欧米が日本の先を行く。国産品の“高品質・おいしさの神話”に溺れて、相手国に受け入れられる努力がおろそかになってはいないか。
和食人気が広まったことで、輸出が増えるという発想だけではいけない。必要なのは珍しさか、新鮮さか、それとも価格か。最終的な選択権は輸出相手国の消費者にある。まずは何が求められるか、じっくり調べるべきだろう。
(2017/10/12 05:00)