[ オピニオン ]
(2017/10/17 05:00)
後継者不在の中小企業は、第三者に事業を譲ることを選択肢に入れ、独自技術やサービス、優秀な人材を次世代に承継する準備を始めるべきだ。政府は中小企業がM&A(合併・買収)や事業譲渡に踏み切りやすい環境を整備してもらいたい。
日本政策金融公庫総合研究所の調査では、60歳以上の経営者の半数以上が廃業を予定し、個人事業者の約7割が「自分の代でやめるつもり」と回答した。ただ、廃業予定の経営者の3割は同業他社より好業績を上げており、今後10年の将来性についても、4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と答えた。
一方、この10年間で法人経営者の同族承継の割合は急減し、従業員など第三者への親族外承継が6割以上に達した。公表案件だけで年700件程度の未上場企業のM&Aが確認されたという。
経済産業省・中小企業庁は2018年度の税制改正要望で、中小・小規模事業者の再編・統合の際の税負担軽減措置の創設を要望している。ファンドから出資を受けた際にも中小企業優遇税制が受けられるような要件緩和措置を講じる方針だ。相続税、贈与税の納税猶予制度の抜本的な拡充も検討する。
政策支援は拡充されているものの、手続きや手順をはじめ、M&Aや事業譲渡のハードルは高いのも事実だ。まずは全国47都道府県に開設されている国の「事業引継ぎ支援センター」に相談してはどうか。
発足以来、1万7000社を超える相談に応じ、800件程度の引き継ぎを実現した。引き継ぎ案件の7割が第三者承継で、譲渡企業は従業員10人以下が約7割を占めた。例えばバロ電機工業(広島市安佐南区)は、同センターの紹介により、広島銀行が仲介し、2年3カ月かけて同業の東洋電装(同)に全株式を譲渡している。
フランスには政府系金融機関や民間企業が参画する小規模M&Aの全国取引所が形成されている。日本も早急に同様の枠組みを整えなければ、サプライチェーンのすそ野を担う優良中小企業が突如失われかねない。
(2017/10/17 05:00)
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