[ オピニオン ]
(2017/10/19 05:00)
持続可能な社会を築く上で、人口減少をあえて「好ましい」と捉え、問題点を解決する研究を立命館大学が進めている。高齢化社会にあって“生涯現役”でいるには、どのような条件が必要か。文理融合で多角的に取り組む挑戦に注目したい。
この研究は、2008年度から「立命館グローバル・イノベーション研究機構」が進める全学プロジェクト。16年度からの第3期の柱は「少子高齢化に対応する社会モデル形成」。前提として人口問題に対して独自の考えを打ち出している。
立命館理事補佐の村上正紀氏によると、持続可能性は「生活の高度化」と「総人口」の掛け算で決まる。日本国内の生態系の供給量で賄える人口は大正時代の5200万人。土地の生産性を向上させれば、国が2060年に予想している人口8800万人程度を賄えるという。
「日本の人口減少はその“理想的な姿”に向かっている」と村上氏。「人口減自体が元凶であり、少子化対策を進めるべきだ」とする考えが社会に根強い中、大胆な主張である。
ただ問題は、人口が同じ8800万人だった1955年は平均年齢が27歳、65歳以上の高齢者割合が5%なのに対し、2060年はそれぞれ54歳、40%に高まる点だ。1人当たりの国内総生産(GDP)の低下を抑えるには、高齢者が支援される側ではなく、支援する側に回ることが必要である。
このため、研究テーマには「高齢者の労働意欲向上」「スポーツによる健康寿命延伸」「非侵蝕医療法による医療費の削減」「労働力を補完するロボット開発」などが並ぶ。
例えば、自動運転車の人工知能(AI)やサービスロボでは、言語や標識などを扱う記号論を導入。人とのよりよいコミュニケーションを目指す一方、実用化された時の人の幸福感の評価にも取り組む。
いずれも文理融合が必要な研究であり、高齢化社会の先頭を走る日本が手がけるべき領域である。世界に発信できる“日本型モデル”の構築に向けて、成果を期待したい。
(2017/10/19 05:00)