[ オピニオン ]
(2017/11/7 05:00)
人工知能(AI)を社会に役立てるには、人が仕事を奪われるかどうかの脅威論を脱し、AIの判断を受け入れるための倫理面を含めた条件づくりが必要だ。各界の有識者による議論の深まりが待たれる。
AIが賢い判断を下すには、手本となるデータを大量に学習しなければならない。学習が足りなかったりデータの質が十分でなかったりしたら、賢くはならない。また学習するデータ自体に偏りがあると、意思決定も歪んでしまう。
従って「AIの意思決定が信じられるのか」といった疑問が出てきやすい。AIの構築段階で、透明性や説明責任を問う意見もある。産業社会における信用のあり方のみならず、「知性とは何か」という根源的な問題に通じる。ある面、AIに人間的な倫理を求めるものだ。
これらの課題に対し、海外では米国のIBMやアマゾン、グーグルなど6社が業界団体「パートナーシップ・オン・AI」を設立し、AI研究のあり方について意見交換を始めている。参加する企業・団体は徐々に増えており、日本からはソニーが参加している。
米IBMリサーチで『AI倫理』のグローバルリーダーを務めるフランチェスカ・ロッシ氏は「多様性を持ったメンバーが(議論に)参加することに意義がある」と語る。
AIとは「人間の能力を補完し強化する手段。人間の役割を置き換えるものではない」(ロッシ氏)というのが研究者や開発者の共通見解。将来、AIが暴走したり、判断を誤る懸念に対しては「例えばAIに人間の価値観をモデル化して組み込む考え方がある」という。
関連業界ではAI開発のガイドラインも俎上(そじょう)に載っている。ロッシ氏は「規制ではなく(IT標準化のための)IEEE規格のような枠組みがあってもよい」という。また「何よりもAIを開発する人間を信頼することが重要だ」と指摘する。
AIが真に社会で共存共栄するには、倫理面でも人間に認められなければなるまい。人類の英知に期待したい。
(2017/11/7 05:00)
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