[ オピニオン ]
(2017/11/8 05:00)
医薬品や医療機器の国際的な規制のあり方を議論する「薬事規制当局サミット」が日本で初開催され、再生医療製品について国際的な規制の調和を進めることで合意した。日本はiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究開発などで世界をリードしており、産業化に向けた議論もリードしたい。
再生医療製品は人体が持つ細胞や再生能力を利用し、病気やけがで損なわれた臓器や組織を正常な状態に回復させる製品。人の細胞を培養・加工して身体の構造や機能の再建・修復、病気の治療・予防を目的に使う。培養表皮や培養軟骨、間葉系幹細胞などがあり、将来的に市場拡大が見込まれる。
一方、各国で品質管理のあり方をはじめ規制がばらばらなのが実情だ。多国間で規制を検討・調和させる医薬品と比べて、規制の検討が遅れている。
今回のサミットには厚生労働省をはじめ、世界29カ国・地域から薬事規制当局の代表ら86人が参加。合意により、世界保健機関(WHO)や医薬品規制調和国際会議(ICH)などの場で議論を進めることとなり、ルール作りが大きく前進する。
規制の調和により、再生医療製品の研究開発や市場形成の早期化が期待される。承認済み再生医療製品を海外に展開する際にも、規制の確認業務などの省力化が期待され、市場展開が促されそうだ。
医薬品・医療機器の薬事規制は、治療効果の高い画期的な製品をいち早く実用化するため、世界的に審査・承認期間を短縮する制度が整備されつつある。米国食品医薬品局の「ブレークスルー・セラピー(画期的新薬)指定制度」や、日本の「先駆け審査指定制度」がそれで、同様の制度が欧州や韓国などにも広がっている。
医薬品や医療機器市場は海外メーカーが強く、日本は輸入超過状態にある。しかし再生医療の研究開発では、京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞をはじめ、世界のトップを走る。日本経済の一翼を担う産業に育てるためにも、規制調和をリードしてほしい。
(2017/11/8 05:00)