[ オピニオン ]
(2017/11/17 05:00)
政府は幼児教育の無償化や待機児童対策を柱とする2兆円規模の政策パッケージを年内に策定する。3000億円の拠出を求められる経済界には、費用対効果の高い施策づくりに主体的に関与する姿勢が望まれる。
消費税財源だけでは不足する3000億円を企業に求める今回の案は、そもそも唐突感があった。10月下旬に開催された会議の席上、安倍晋三首相から直接、協力を要請された経団連の榊原定征会長は理解を示したが、日本商工会議所の三村明夫会頭は慎重姿勢をのぞかせる。
保育・教育にかかる費用は未来への投資であり、経済界は企業負担に一様に反対しているわけではない。高齢者に偏重した社会保障制度を、子どもや若者重視に再構築するべきだとの声も強い。
ただ、今回の教育無償化に関しては、経済界の負担ありきで拙速な議論が進む印象が否めない。財政規律の観点も踏まえたメリハリある施策が講じられるかも疑問符が付く。
中小企業経営への影響も気がかりだ。3000億円を捻出するため、料率引き上げを検討する「事業主拠出金」は企業の収益状況や規模にかかわらず、従業員の賃金に一定の料率を乗じて算出する。ただでさえ大手に比べ労働分配率が高く、厳しい収益環境にある中小企業にとって負担が増える。優遇措置の検討も必要になろう。
これら実情を踏まえ、経済界は教育無償化の対象をどう線引きするかや、子育て世代の従業員のニーズについて早急に考えをまとめ、制度設計に反映させる必要がある。自民党は17日に経済3団体からのヒアリングを予定するが、こうした機会も捉えたい。
経済同友会の小林喜光代表幹事は「政府・自民党案がある程度固まりつつあるところで意見を開陳したい」と独自案をまとめる考えだ。制度設計のタイミングを逃すことなく実行してもらいたい。
衆院選を経て、政策決定プロセスの官邸主導が強まる中、経済界は「カネ」だけでなく「クチ」も出す存在であるべきだ。
(2017/11/17 05:00)
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