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第40回フレッシャーズ産業論文コンクール/入賞者座談会

(2017/12/22 05:00)

日刊工業新聞社は、「第40回フレッシャーズ産業論文コンクール」の上位入賞8人による座談会を開きました。会社を選んだ理由や社会に出て実感したこと、今後の目標などを話し合いました。「言葉で言ったことを実践しているか振り返る」など、はっとさせられる率直な意見が飛び交いました。(入賞論文は2017年11月17日付日刊工業新聞に掲載しています)

会社を選んだ理由

  • 妹川さん

―受賞おめでとうございます。会社を選んだ理由と現在の仕事の内容を教えて下さい。

大谷 就職活動は三つの軸を重視しました。SEになること、九州に貢献できる仕事がしたいということ、九州にいながらグローバルに働きたいということです。当社はそれらを実現するチャンスがある会社だと感じて選びました。現在は会社の保有する経営データをグラフ化、可視化して経営判断をサポートする「BIツール」の導入や運用、保守をする部署にいます。

藤原 大学では低温物性物理学の研究をしていて、研究に携わる仕事をしたいと思っており、地元の宮城県で材料開発から製品開発まで行っている点に魅力を感じ、志望しました。今は材料研究開発本部に所属しています。お客様が望んだ特性を満たす製品を作るために、サンプル品の試作と特性評価をしています。

妹川 就職活動では「地図に残る仕事をしたい」「仕事をするからには全ての製作工程が見渡せる職業や業務に就きたい」という2点を重視していました。出身地の大阪に本社があり、鋼橋や環境プラントなどを日本や海外で生み出してきた実績から、就職を決めました。今は工場で鋼橋工事を担当しています。お客様が求める品質や納期を守るため、お客様と工場をつなぐパイプ役を担っています。

  • 吉冨さん

吉冨 私が生まれた日に阪神淡路大震災が起きました。小さい頃から、誕生日に建物が崩れる映像をずっと見て「崩れた建物を直したい」と建設会社への就職を決めていました。建物の改修工事をする会社にめぐり合えたので、当社を選びました。

岡 小さい時からモノをつくったり、仕組みを考えたりすることが好きで、機械設計をしたいと思っていました。環境問題に貢献できる会社ということで当社を選びました。一般消費者向けの製品と違い少量多品種の製品ラインアップで、1人の技術者が製品に丸ごと関われる点もおもしろそうだと思いました。今は水質を測る製品の改善や、先輩社員が担当する新製品の手伝いをしています。

小崎 当社は自動車メーカー向け超大型プレス機メーカーです。日本で製造する企業が4社ほどしかない製品ですが、そのうちの1社が地元の福井にあり、世界に羽ばたいて活躍しています。スケールの大きな会社という点に魅力を感じて志望しました。5月に営業部の配属になり営業事務をしています。修理に必要な部品の発注見積書を作成する仕事です。海外向け案件が多く英語で書くので大変苦労しています。

中村 食品メーカーを中心に就職活動をしました。決定的なきっかけは、学生時代にパン屋で職人の方のアシスタントとして働き、食品と人を結ぶ企業に就職したいと思ったことです。総務課に配属となり、お客様の対応や庶務全般を行い、社内外を結ぶ窓口のような仕事をしています。本当にさまざまな方と関わる機会があります。

佐藤 誰でもお店に行けば買い物ができるという当たり前のことの中には、どんな苦労があり、やりがいを感じられるかを実感したいと思ったのがきっかけで、物流関係の会社を志望しました。事務員として、ドライバーが荷物を配送するための伝票を作成しています。

新たな発見

  • 大谷さん

―社会に出て実感したこと、学生時代と違うことはありましたか。

大谷 一番感じたのは、人を思いやることです。小さなことですが、会議の中の議事録の書き方や、次にシステムを点検する人が、きちんとできるよう記録を残しながらテストすることです。人を思いやることは学生時代から言われてきたことですが、仕事は自分だけで終わらず相手がいるということを通じて、人に心を配ることが知識から知恵へと深まりました。そういう気付きを得られたのは、すごく勉強になったと感じています。

岡 メーカーに入って研修などでモノづくりの工程を経験し、「こうやって工業製品ができるんだな」と実感したことが大きいと思います。身の回りのモノを見ても、何でできていて、どんな設計になっているのかというところに目が行くようになり、モノをつくっていく立場になったと感じます。

  • 中村さん

中村 学生時代は目の前にある一つの仕事をすることが多かったのですが、会社は複数のことが並行して進むことが多くあります。常に優先順位を考えながら自分は何をすべきか、計画を立てて働くことの難しさを痛感しました。先輩からアドバイスを受けることもあり、最近は少しずつ自分のすべきことが見えてきました。

佐藤 私は高校卒業後に仕事を始めたのですが、お金をもらうことのありがたみを感じるようになりました。学生時代にアルバイトの経験がなく、働くことへの不安と、自立することに対してすごく不安があったのですが、実際に働いてみると、不安よりも「お金をもらっているんだ」という責任で毎日充実して働けるようになりました。

論文に取り組んで気付いたことなど

  • 小崎さん

―論文を書くことは何かのきっかけになりましたか。

小崎 私は製造業における女性の活躍について論文を書いたのですが、きっかけは入社直後の工場実習で女子トイレがないなど、女性に働きにくい環境はまだあると思ったことです。女性は文書作成など細やかな仕事などに向いていますし、製造業で活躍できると思います。女性の働きやすい環境づくりには、一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を選択できる仕組みが必要で、そのためには家族や会社、社会の理解と協力が不可欠だと感じました。製造業は重たいものを運ぶなどの作業がありますが、作業の標準化を推進すれば、きっと女性も働けると思いました。

吉冨 建設業界に対する偏見がテーマでしたが、入社して間もないフレッシュな気持ちで書けたことが一番大きいと思いました。その気持ちを持ち続けて働ければと思います。建設業界は年齢層が高くなっているので、いかに若い人材に対する偏見をなくすかによって、人材の活用の仕方が変わってくると思いますし、いい勉強になりました。

妹川 社会人としての自分を見直し、今後を考えるいい機会になったと思います。自分がテーマにしたのは「技術と技能の伝承」です。新入社員の人は学びたい気持ちが先行する中で、学ぶ側と教える側が何を伝えるかを明確にしなければ、技術・技能の伝承はできないことを書きました。今まで学ぶ側だった自分が今後教える側に立った時にどうありたいか、今から出来ることはないかを考えるきっかけになりました。

  • 藤原さん

藤原 仕事が自分に合わなくてやめてしまう、やめたいと考えている友達もいて、「まだ入って半年もたってないのに、何で?」という思いは、論文を書き始めたころからありました。そう思わせてしまう会社がよくないのか、そう思ってしまう我々がよくないのかを考えながら、会社も自分も得をする「ウィン−ウィン」の関係を築くにはどうしたら良いかを考えられるようになったことがよかったと思います。

将来の目標

  • 佐藤さん

―将来の目標はありますか。

佐藤 会社の名前「ライフサポート」にちなんで、これからも物流でお客様の生活を支えたいというのが第1の目標です。物流はドライバーの配送がメーンで、私はドライバーをサポートする裏側ですが、事務員がいないとドライバーは荷物を運べません。物流の基点は自分なんだという気持ちを持つと、仕事への取り組み方もどんどん変わっていくと感じました。これからも事務員として自分の仕事に誇りと責任を持って仕事を続けたいと思います。

中村 食品メーカーは、人の体だけでなく心も健康にするものだと思います。しかし食中毒や異物混入など、一歩間違えると人を不健康にしてしまうリスクを伴う仕事だと思っています。世界中の人々が安心して口にできる製品を世に送り出すことが、食品メーカーの一番の務めです。働いていると、徐々に消費者の目線を忘れてしまいます。したがって、当社の商品を口にしていた時の気持ちを今後も忘れずにいることが、大前提だと考えています。私は直接お客様とお話しする機会は少ないのですが、そのぶん社内の人と密接にコミュニケーションを取ることが多いという利点を生かし、製品やサービスに対する意見や考えを率直に言える人でありたいと考えています。

小崎 目の前にある目標は、与えられた仕事を完璧にこなすことです。私は営業事務ですが、淡々と作業をこなすのではなく、変化に合わせてやり方を変えたり、提案したりして、会社全体をサポートしていける存在になりたいと思います。働きながらも結婚、出産して、家庭も仕事もこなしたいと思います。

  • 岡さん

岡 機械設計の仕事ができるようになって、製品を設計することが目標です。また、論文の内容とも関係しますが、仕事に好奇心を持ち、おもしろがってやることを大事にしたいと思います。人と違うということを排除しがちな世の中ですが、人と違うから排除するのではなく、それがいいことか悪いことか判断する視点が大事ではないかと思います。

吉冨 工事の種類が多いので、実際の現場で施工する様子を見て、書類だけで勉強した内容とは違うことをもっと勉強しなくてはと思います。勉強を繰り返して力を付け、いつかは「あいつに聞けば大丈夫だろ」「あいつがそう言っているんだったら問題ない」と言われる人になりたいです。

妹川 期待に応えて次の事業につなげられる人になることが、今の夢であり目標です。自分は鋼橋製作の工程管理という全体を見渡せる業務をしています。全体を見渡すには設計や現場の職人を含め、さまざまな人たちの中に自分から飛び込む勇気が今は一番必要だと思っています。恥ずかしがらずさまざまな部署や人に質問に行けるのは、新入社員である私たちの特権だと思います。その特権を生かし、知識を付けることで1+1=2ではなく、1+1=3以上の成果につなげたいと考えています。それが次の事業につながると思います。

藤原 今後の目標は二つあります。一つは数年先に必要とされるスペックを見極めて、製品を作れる計画性と技術力を養うことです。もう一つは物理学科出身を生かした製品開発をすることです。製品評価において「なぜ値がこうなったか」と、原理に立ち返り考察することができる、一芸に秀でた存在になれればと思っています。

大谷 言葉で言ったことを本当に行うこと、実践することをいつも忘れずにいたいと思います。「いい言葉だな」「いいアドバイスもらったな」で終わらずに、「それを今、自分はちゃんとやっているかな」と振り返り、忘れないようにしたいと思います。それができていれば、ステージごとに自分がやるべきことが見えてくると思います。その見えてくるものをつかむかつかまないかは、自分が実践できるかどうかだと思います。

■出席者

【I部入賞者】

富士通九州システムサービス

         大谷ちひろ(おおたに・ちひろ)さん

日立造船     妹川賢司 (いもかわ・けんじ)さん

堀場製作所    岡 要平 (おか・ようへい)さん

山崎製パン    中村実央 (なかむら・みお)さん

【II部入賞者】

トーキン     藤原万里子(ふじわら・まりこ)さん

西岡化建     吉冨拓己 (よしとみ・たくみ)さん

エイチアンドエフ 小崎明日香(こざき・あすか)さん

ライフサポート・エガワ

         佐藤真奈 (さとう・まな)さん

司会  日刊工業新聞社科学技術部 安川結野

(2017/12/22 05:00)

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