[ オピニオン ]
(2018/3/7 05:00)
「経営の神様」として各界の尊敬を集めたパナソニック創業者の松下幸之助翁。謦咳(けいがい)に接する機会はなく、先輩が入院中の病室で取材したなどの逸話を聞くのみだ。
それでも担当記者時代、ゆかりの場所を見学する機会があった。南禅寺(京都市左京区)にほど近い別荘で、今は迎賓施設の「松下真々庵(しんしんあん)」。生前の幸之助は、ここで思索にふけったとされる。静かな庭を眺めながら感性を磨いていたのかもしれない。
8代目社長として現在のパナソニックを率いる津賀一宏氏は、家電メーカーに固執せず、車載機器を中心とするBツーB事業の転換へアクセルを踏む。ただ「物をつくる前に人をつくる」「お客さま大事の心」など幸之助の理念は変えないという。
日本の電機メーカーは20世紀末から環境の激変と業績悪化に苦しんできた。ようやく最近、増益決算や日立製作所の中西宏明会長の経団連会長内定など、業界から明るいニュースが聞かれるようになった。
7日に創業100周年を迎えるパナソニック。創業者の思いを未来に伝承する「パナソニックミュージアム」が同日開館し、9日から一般公開する。日本勢の代表の一角として、新たな世紀に幸之助に誇れる実績を上げてもらいたい。
(2018/3/7 05:00)