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[ 商社・流通・サービス ]
(2018/3/28 16:30)
中国・マカオ特別行政区の公立マカオ大学は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の開発・運営に携わる専門人材を育成するプログラムを日本で実施する。同大学がこうしたプログラムを日本で行うのは初めて。7月21、22の両日に長崎県で行う。さらに2019年4月に大阪府、同7月に北海道、同10月に東京都、20年4月に和歌山県での実施をそれぞれ企画・立案しており、各地域の自治体や商工団体などと調整を進めていく構え。
成功体験をひもとく
マカオはカジノによって飛躍的な経済成長を遂げており、マカオ大学工商管理学院院長兼同大学アジア太平洋経済経営研究所所長の蘇育洲教授は、このプログラムの目標について「(マカオの)成功経験の理由を知ってもらい、未来の商機と課題への対応力を身に付けてもらう」とした。
IRはホテル、ショッピングモール、レストランをはじめ、国際会議場や展示施設といったMICE施設、カジノやそのほかのエンターテインメント施設などを含めた複合的な観光施設をいう。マカオでは、日本のカジノ解禁をにらみ、ギャラクシー・エンターテインメント・グループ(GEG)など、IR業界やゲーミング(カジノなどのギャンブル)業界の各社が活発な動きを見せている。
マカオ大学は、これまで政府、現地のIR業界の産学官で連携し、さらにそこに市民を加えた“四位一体”による「(犯罪やギャンブル依存症のリスクを抑えた)健全なカジノ産業の育成」(蘇氏)に取り組んできた。そのため、今回のプログラム実施は、つながりのある地元のIR・ゲーミング各社が日本進出を円滑に進めるための後方支援の意味合いもある。
7月に長崎県で実施
マカオ大学が今回、日本で実施するのは「グローバルリーダーシップ育成プログラム」。同大学のアジア太平洋経済経営研究所が中心になって進める。IR経営管理学、ホスピタリティ(もてなし方)やゲーミングの専門研究者を日本に派遣する。
7月に実施する長崎県のプログラムは、九州にIRを設置する場合の「戦略、成長、社会責任、九州IRにおけるゲーミング」をテーマにする予定。内容については今後、詳細を詰める。鉄道、ドライブ、食の観光など、九州という立地を生かしたIRの講義などを行う。佐世保市にあるIRの候補地とその拠点になるハウステンボス(佐世保市)の視察も盛り込んでいる。
大阪府、北海道、東京都、和歌山県については企画・立案段階で、それぞれ実施に向けて各自治体、商工団体と話し合いを進める方針。各地のプログラムのテーマは大阪が「イノベーション、伝統、文化 in IR」、北海道が「ネオツーリズム、大自然観光と統合型リゾート in 北海道」とする。
東京が「アジアにおける金融大都市首都圏東京、その戦略的次世代ツーリズム・ビジョンを考える」、和歌山が「和歌山IR、ツーリズムに込められた自然と人間回帰へのビジョンとは」としている。各地いずれも、産学官それぞれの協力を得て実施していく考えだ。
カジノ一辺倒からの脱却も
マカオは99年に英国から中国に返還。02年にカジノへの参入を自由化した。13年時点で財政の歳入がマカオ返還以前の98年に比べて約10倍に膨らみ、カジノ税による収入がその約8割を占めて歳入額を押し上げた。地元メディアによると、マカオ政府財政局がまとめた17年の歳入額(暫定値)は前年比15.3%増の1180億6920万パタカ(約1兆5510億円)で、このうちゲーミング税による歳入が79.6%を占める。カジノ一辺倒からの脱却を目指す動きも出ている模様だ。
IRをめぐる国内の動きについては、16年12月に「IR整備推進法案(カジノ法案)」が国会で成立。その後、IRを設置する上での取り決めなどを盛り込む「IR実施法案」について与党内で協議を進めている。ただ、話し合いが難航しており、政府は3月内の閣議決定と法案提出を目指していたが、4月以降になる公算が大きい。こうした状況を踏まえ、IR業界の関係者には「実際にIRがオープンできようになるのは25年あたりになるのでは」といった見方も出ている。
(2018/3/28 16:30)