[ オピニオン ]
(2018/6/5 05:00)
農業に従事する人は2010年に260万人だったが、年々減少、16年に200万人を割り17年は181万人になった。17年の平均年齢は66・7歳だ。農業は農業者の長年にわたる経験や勘によって営まれてきた。しかし高齢化が進む中で、経験や勘が失われつつある。こうした農業が抱える課題を情報通信技術(ICT)などにより解決しようという「農業データ連携基盤」が動き出した。
これまで大学やICTのベンダーなどと連携して気象や栽培、市況のデータを入手したり、消費動向に合わせて収穫時期などを調整したりする農家もあった。しかし、これらのサービスは個別農家で完結していることがほとんどだった。今回は産学官が連携し、多くの農家がデータを使って生産性向上や経営改善に挑戦できるプラットフォームを構築する試みだ。
具体的には、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの支援を受け、農業データ連携基盤協議会(WAGRI、神成〈しんじょう〉淳司会長=慶応義塾大学環境情報学部准教授)が、農業の担い手がデータを使って生産性の向上や経営の改善に挑戦できる環境づくりを進めてきた。すでにプロトタイプは稼働を始めており、19年4月に本格運用する。
ICT関連はNTT、NEC、富士通など、農機は井関農機やクボタなど、そのほか農林水産省や関連の国立研究機関、全国農業協同組合連合会、農林中央金庫、自治体、民間研究機関など多くが協議会に参加している。これらのメンバーが今までばらばらだった農業にかかわるデータを、ベンダーやメーカーの垣根を越え集約・蓄積する。
農業は就業者の高齢化だけでなく、農地が30年で2割弱減少するなど厳しい状況だ。一方で、近年の日本食ブームで、輸出は拡大している。牛肉やブドウなどは高級ブランド育成により、価格・数量ともに上昇傾向にある。データ連携基盤が高齢化や人手不足などの農業の課題を解決し、コスト削減、生産性向上、高付加価値化の手助けになることを期待したい。
(2018/6/5 05:00)