[ オピニオン ]
(2018/6/20 05:00)
『ごふくやのはんじゃう(繁盛)を知るにわか雨』―。江戸時代の川柳に今でいうシェアリングの様子を詠んだ川柳がある。神田駿河台にあった三越の前身の呉服屋『越後屋』は、雨が降ると屋号と通し番号が書かれた「番傘」を無料で貸し出した。
傘をコンビニでワンコインで買える時代ではない。突然のにわか雨に、店の客や通りすがりの人は喜んで借りていく。江戸っ子は雨に咲き乱れる越後屋の番傘に「ハハァ、あの店は繁盛していやがる」とうわさした。
関西から江戸に進出したばかりの越後屋とすれば、リピーターを獲得する確率が高まるうえ店の宣伝もしてくれる。ただ返しに来なければ店は損する。が、ほとんど返ってきたらしい。
関西が拠点の大手飲料メーカー・ダイドードリンコはJR、私鉄各社の忘れ物傘の提供を受け『DyDo』のロゴを入れた傘のシェアリングを展開している。昨年から関西・関東エリア、愛知県、北海道の自動販売機でも始め、今年から梅雨入りシーズンに合わせ福岡県と甲信越エリアでも開始した。
同社によると傘の返却率は約7割。飲料品購入も期待できる。21世紀の日本人にも、関西の商人(あきんど)魂と江戸のシェアリングエコノミーが息づいている。
(2018/6/20 05:00)