[ オピニオン ]
(2018/7/5 05:00)
近年、自動車の部品組み付けのように、いろいろな工場でコンベヤー上の治具パレットの動きに応じて作業者が移動しながら作業する製造ラインが増えている。この場合、決まった位置での作業に比べ、作業の進捗(しんちょく)状況がつかみにくいという問題があった。進捗状況がつかめれば、遅れている場合は熟練者がサポートに入ることもできるが、進捗状況がつかめなければそれも難しく、ラインをいったん止めることになりかねない。
ワイヤハーネス(組み電線)最大手の矢崎総業は、東京理科大学の日比野浩典准教授とIoT(モノのインターネット)によるサイバー・フィジカル・プロダクション・システム(CPPS)を活用して、移動しながら作業する製造ラインの問題を解決する手法を開発した。
製造ラインにネットワークカメラと映像行動解析ソフトウエアを設置し、作業者の動きや治具パレットと作業者の位置関係などのフィジカル(現実世界)データを取得。サイバー(仮想世界)がフィジカルデータを転写し、作業者の状態をほぼリアルタイムで評価する仕組みだ。「サイバーの世界に取り込んで、現実の動きと理想の動きを突き合わせ、現実の状態を判定する」(日比野准教授)。
このシステムを使うと、いつも同じ作業で遅れている作業者がいれば、その部分の訓練をするとか、治具が不適切な場合は変更するとか、あるいは昼休みの後など時間帯による作業進捗の状況などが分かる。つまり、作業遅れがあればその原因が明確になり適切な対策を講じることができるわけだ。
「IoTはデータを取ってくる役割、CPPSはこのデータを活用して最適化する、両者は対の関係。世の中はIoTの話が中心だが、CPPSと連動させないと意味がない」(同)という。ドイツのインダストリー4・0、米国のIICなど世界のモノづくりの様相が大きく変わろうとしている。日本のモノづくりの強さを維持するためにも、製造業はIoT+CPPSなど新領域に挑戦することが必要なのではないだろうか。
(2018/7/5 05:00)
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