[ オピニオン ]
(2018/7/11 05:00)
「災害と我々は知恵比べをしている。守るのでなく、迎え撃つような気概が必要だ」。防災学の第一人者で、関西大学特別任命教授の河田恵昭さんの言葉が忘れられない。2年前の神戸総局時代、取材させてもらった。
企業の事業継続計画(BCP)の現状について「多くは本当に最悪なシナリオを想定したBCPを作っていない。経済システムが複雑化する昨今、被災したら長丁場の戦いになる。前提条件の見直しが必要だ」と。
「過度の東京一極集中も何とかしなければ。首都直下型地震を受けたら、日本はやられるぞ」。河田さんの言葉は強烈に迫ってきた。
最後に対策を聞くと「小さい頃からの防災教育が大事だ」と冊子を渡された。「百年後のふるさとを守る」の題で、小学5年生向け教科書に河田さんが書いた伝記。江戸時代の終わり頃、地震で疲弊した故郷(和歌山県広川町)のため、私財を投じ百年後にも役立つ堤防造りを実現した、浜口儀兵衛を描いた。
その堤防は、完成から88年後に起きた和歌山沖の大地震で村を津波から守った。さきの大阪北部地震で阪神・淡路大震災を思い起こした人は多くいたと思う。地震が起こる国に住んでいることを再認識し、対策をとらないといけない。
(2018/7/11 05:00)