[ オピニオン ]
(2018/8/2 05:00)
現存する日本最古の水族館「魚津水族館」(富山県魚津市)を見てきた。展示の目玉は全面アクリル製の水中トンネルを持つ「富山湾大水槽」。ブリをはじめとした富山湾の魚が水槽を貫通するトンネルから間近に観賞できる。現在では珍しくはない仕掛けだが、同水族館が国内で先駆けて作った1981年時点では先端技術だった。
当時からあるアクリルも縁の水漏れを防ぐシリコーンも日本メーカー製で、今なお機能を保つ。稲村修館長は「水族館が使うアクリル水槽の技術は日本が世界一」と語る。巨体のブリの群泳が目前で楽しめるのも日本のモノづくり力があればこそだ。
ただ、一匹一匹に注目すると体に赤い点があるのが気になる。実はブリが透明な壁に気づかず、体を擦って硬くなった皮膚。いわゆるタコ。水槽の全面透明化が起こした思わぬ副作用だ。
水族館はタコの解消を図る方策を検討中。ブリの動きを解析し、衝突しやすい箇所を気泡で緩衝させたり、絵で壁に気づかせたり。夏休み明けから順次試すという。
技術の進歩は新たな課題をもたらすが、その解決への意思が次の進歩を導いてきた。この営みに挑む、いにしえの水族館からも新たな英知が生まれることを期待したい。
(2018/8/2 05:00)