[ オピニオン ]
(2018/10/4 05:00)
規制を強化するだけでなく、自治体が地場産業の育成に活用しているかどうかという視点ももってほしい。
総務省が、ふるさと納税の過剰な返礼品にいら立ちを強めている。同省は2017年4月に総務相名で「寄附額に対する返礼品の調達価格の割合(返礼割合)を3割以下にする」ことを通知した。しかし、これは強制力を伴わない助言にすぎない。
同省は18年4月にも同じ趣旨の通知を発し、実態調査に乗り出した。自治体の対応はまちまちで、直近調査(9月1日時点)でも3割超の返礼品を送付している自治体が246にのぼる。野田聖子総務相(当時)は会見で「趣旨を歪(ゆが)めているような団体は対象外にする」と、踏み込んで警告した。
返礼割合の高い自治体に寄付が集中し、他の自治体の努力が報われないのは問題だ。規制の強化はやむを得ない。一方では通知に従って返礼割合を3割に下げる一方、事業に協力した業者に事実上の助成金を支給する自治体まであるという。こうした「規制逃れ」を含めて公平な運用を確保する必要がある。
しかし規制強化は一面ではマイナスだ。同省は同じ通知の中で、電子機器や家具、宝飾品、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車などを「資産性の高いもの」として返礼品にすることを禁じた。該当する自治体は「家具の街」「楽器の街」といった個性を押し出したまち作りに、ふるさと納税が使えない。
確かにパソコンや宝飾品を毎年、返礼品としてもらう納税者は転売が疑われる。しかし、こうしたケースは寄付の回数を制限するなど、きめ細かな対策で回避できよう。地域のイベントや、新開発の地場産品には一定期間、高い返礼割合を認めるなどの方法も考えられる。
現行の規制を徹底すると、コメや肉類、果実など著名な特産品を返礼品にした自治体が有利になり、工業都市や小規模な村落は埋没しかねない。個々の自治体が、ふるさと納税による税収増をきちんと地場産業の育成に振り向けているかどうかにも目を向けるべきだ。
(2018/10/4 05:00)
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