[ オピニオン ]
(2018/10/5 05:00)
企業業績は好調で、株価が26年ぶりの高値をつける中で、企業の景況感は一向に盛り上がってこない。原油価格の上昇に加えて、9月の台風21号や北海道地震などの自然災害によって企業心理も冷え込んでしまったようだ。
日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断DI(景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数)は3四半期連続で悪化した。大企業非製造業のDIも8四半期ぶりに悪化に転じた。景況感悪化の背景には、自然災害などに加えて、米中貿易戦争の泥沼化によって世界経済の先行き不透明感が高まりつつあることも挙げられる。
さらに、大企業製造業の先行きの景況感は引き続き横ばいの見込み。米中貿易戦争が他の主要国、新興国にも影響を及ぼし、貿易戦争の弊害が世界的に広がることが懸念されるためだ。
日米経済関係では、トランプ米大統領が自動車輸入に中国同様の関税引き上げを適用することが危惧された。しかし、先週の日米首脳会談で新たに物品貿易協定(TAG)の交渉を開始することで合意し、ひとまず関税引き上げは見送られたことから、目先の景気下押し要因にはならないとみられる。
景況感は盛り上がりに欠けるが、2018年度の設備投資計画は大企業全産業で前年度比13・4%増と、投資意欲は相変わらずおう盛。高水準な企業収益を背景に、人手不足による自動化・省力化需要の高まりに対応しようとしている。
企業は、「米国第一」と公言して保護主義的な通商政策を続けるトランプ大統領に惑わされることなく、計画通りに積極的な設備投資を実行して、生産性向上を図るなど機動的に対応することが必要だ。
政府の成長戦略は開始から6年経過するが、効果を上げていない。安倍晋三政権は初心に戻って、民間活力を生かすための規制改革の推進などで企業を支援し、経済の好循環を実現して消費拡大につなげてほしい。
(2018/10/5 05:00)