[ オピニオン ]
(2018/10/19 05:00)
2018年のノーベル生理学医学賞に京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授の受賞が決定したことは、関西で今後の成長が期待されるライフサイエンス産業を活気づける起爆剤になりそうだ。
「今回の受賞は、関西が健康・医療分野の先進地域であることを改めて世に示すもの」(関西経済連合会の松本正義会長)。本庶氏の快挙は、12年に京大の山中伸弥教授がノーベル生理学医学賞を受賞したのに続き、関西に大きなインパクトをもたらすといえる。
関西では京大や大阪大学を筆頭に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)など再生医療の研究が活発だ。大阪で古くから道修町(どしょうまち)が製薬企業の集積地として知られ、神戸は医療産業都市構想を掲げ理化学研究所の施設を中心に国内有数の医療産業クラスターを形成してきた。京都府と大阪府、奈良県にまたがる関西文化学術研究都市でも、今春にiPS細胞を応用した創薬を目指す活動が始動。さらに大阪府や大阪市などは、大阪市中之島4丁目の市所有地に21年度以降、国際的な再生医療拠点を開設する計画を進める。
大阪、京都、神戸の3商工会議所は連携し、健康寿命を延ばす事業を創出する「関西ウエルネス産業振興構想」も打ち出す。健康・医療分野で関西の存在感を高めるべく、医薬や医療、健康、運動、食など幅広い分野で具体的な事業化を目指す。
有望産業の育成に向け、大学と企業の連携はカギを握る。本庶氏は日刊工業新聞社とのインタビューで企業との連携を問われると「共同研究で(企業とは)互恵の関係を築きたい。多くの企業に、日本の優れたシーズ(研究の種)にもっと目を向けてほしい」と訴えた。
本庶氏が免疫抑制分子「PD―1」を1992年に発見し、本庶氏と共同研究を進めた関西の製薬会社、小野薬品工業は20年以上を費やしてがん治療薬「オプジーボ」を開発した。大学の知を改めて見直し、関西独特の民の力を粘り強く発揮し、世界で競争力を持つライフサイエンス産業を育成してほしい。
(2018/10/19 05:00)