[ オピニオン ]
(2018/11/6 05:00)
東京都心部を一周する地下鉄大江戸線の完成にめどがついた1999年、都庁の担当者は「東京環状線」と命名を計画した。これをひっくり返したのが都知事だった石原慎太郎さん。
路線は環状部からヒゲ状に放射部が伸びる「6の字」なので、ずっと乗っていても同じ駅に戻らない。それを環状と呼ぶのは乗客に迷惑だと叱り、改めさせたとか。石原さんは後々まで「役人はそういう“ウソ”をシレっとつくんですよ」と憤っていた。
この逸話を思い出したのは、東京の築地と豊洲を結ぶ新しい道路が暫定開通したからだ。正式名称は「環状2号線」。将来は有明まで延び、豊洲市場や東京五輪の選手村を都心と結ぶ重要な道路となる。
土地勘のある方ならお分かりだろうが、郊外へ向かうルートは明らかに環状を逸脱している。都の資料によれば、もともとは環状道路の計画だったが、臨海部(埋め立て地)との連携強化のため放射状に延伸する方針に改めた。しかし名称は変えずに工事を続けた。
運輸相を経験し、交通政策に一家言ある石原さんだったら「またウソか」と怒ったろうなぁ。せめてルートにふさわしい愛称をつけて、新しい道路がドライバーから「環2」と呼ばれないようにしてほしい。
(2018/11/6 05:00)