[ オピニオン ]
(2018/11/7 05:00)
2019年度税制改正要望の議論が本格化する。産業界に関係するテーマでは、個人事業主を対象にした「個人版事業承継税制」の創設と、車体課税の抜本的な見直しが焦点になる。いずれも日本の産業競争力や消費に影響する案件であり、政府は税制改正に向けて前向きに検討する必要がある。
個人版事業承継税制は、先代経営者から後継者への承継時に、土地や建物、機械設備など事業用資産の移転で生じる税負担を軽減する。一般的に経営者の資産は株式や不動産が大半を占め、現金は少ない。資金不足などで承継に踏み切れない経営者を支援し、承継を円滑にするのが狙いだ。
法人格がない個人商店では、事業用と私用の資産の区別がつきにくいとされ、税制面でどう優遇するか難しい面もある。一方で、承継が進まなければ高い技術やノウハウを持つ個人商店が廃業に陥る恐れもある。すでに法人の事業承継税制を抜本改革した経済産業省は、個人版の改革にも乗りだし、意欲のある個人事業主の廃業を防ぎたい意向だ。
一方、車体課税は自動車税、自動車重量税、自動車取得税に大別される。このうち、自動車税は軽自動車税との差が大きすぎる点や、保有期間が長くなると負担感が強まる点を考慮し、引き下げる方向で要望した。軽自動車の税率を基準に、普通車の税率を全体的に近づけるイメージになる。
また、消費増税に伴う需要変動の平準化策も検討する。前回、増税した後に需要が大きく減ったことから、2019年10月以降にユーザーが取得する段階で、2%の増税分の負担を軽減できるような措置を講じる。このほか重量税では、暫定的な上乗せ税率「当分の間税率」の廃止を要求した。ただ、車体課税の多くは地方税であるため、地方財政にも配慮する形になる。
今後、自民党の税制調査会が中心になり、税制改正要望の議論を進める。個人版事業承継税制や車体課税は産業界にとって必要な取り組みであり、建設的な議論が望まれる。
(2018/11/7 05:00)