[ オピニオン ]
(2018/11/8 05:00)
東京外国語大学、東京農工大学、電気通信大学が連携し始めるサステナビリティー(持続可能性)の博士教育は、研究者養成以外の高度人材育成を広く考えるうえでの好例だ。特色ある中規模大学が、連携により教育改革を進める道を応援したい。
3大学が2019年度に始める大学院後期課程の新専攻は、途上国など国際社会のエネルギー、環境、食料、健康などの領域で、チームを組んで実社会の課題解決に取り組む文理融合の博士人材を育成する。3大学は文・理それぞれ特色ある中規模単科大学だ。理工系2大学はライバルに見えるが、実はそうでもないという。東京農工大は食料、エネルギーやライフサイエンス、電通大はビッグデータ(大量データ)、人工知能、光工学と強みが相補的なのだ。
いずれも西東京地域で近隣にあり近年、連携の実績を低学年の教育から積んできた。学部1年生向けの基礎ゼミでは、たんぱく質、ロボット、米国大量生産システムなどを取り上げる。英語科目の夏休みの集中講義は全学生が対象だ。
単位互換協定による交流は珍しくないが、実際は学生の利用がほとんどないケースも多い。3大学間ではそれなりの規模の複数の交流が継続的にされ、学生の幅の広さという単科大学の欠点をカバーする効果が期待できる。
さらに高大接続のプログラム「高校生グローバルスクール」もある。少子化が進む中、地域の大学が東京で開く高校生向けの合同説明会はある。しかし同スクールは、グローバル社会のテーマを3大学のさまざまな視点で議論し、高校生が分野横断の学びを実感するもので手がかかる。それだけに意欲の高い受験生獲得につながる期待が持てる。また「3大学やその他の大学に進学しても構わない」という人づくりの姿勢も好ましい。
一方、国立大学間では経営統合の検討も出ているが、3大学の学長はいずれも「考えていない」と明言する。効率化優先とは一線を画した、特色ある中規模大学のいくつもの成功例を期待したい。
(2018/11/8 05:00)