[ オピニオン ]
(2018/11/13 05:00)
エンジニアリング大手の千代田化工建設が、米国の液化天然ガス(LNG)工事の採算悪化で経営危機に陥っている。足元の受注環境は悪くないだけに、難局を突破してほしい。
同社の2018年4―9月期決算は当期損益が1086億円の赤字(前年同期は34億円の黒字)に転落。3月末に37・5%だった自己資本比率は9月末には12・7%に急落し、決算短信には企業の存続に疑義が生じたことを示す「継続企業の前提に関する注記」を記載した。
千代田化工といえば日揮、東洋エンジニアリングと並ぶ“エンジ御三家”の一角。1970年代に中東で最初のLNGプラントを建設以来、世界各地で実績を積み、世界シェア4割というLNGプラントのリーディングコントラクターだ。2009年には当時世界最大のカタールのLNGプラント建設が評価され、エンジ領域から初めて第3回ものづくり日本大賞の経済産業大臣賞を受賞した。
しかし今回は米ルイジアナ州のキャメロンLNGプロジェクトで現場作業員の生産性低下や賃金高騰などが重なり、巨額損失に追い込まれた。
同社は1996―97年度に連続して500億円超の当期赤字を計上。98年度も赤字決算という経営危機を経験した。この時は三菱商事などの支援を受け、正社員3500人を1100人まで削減する構造改革を断行。その後、2008年に三菱商事の傘下に入った。
今回の巨額損失に対しては販売・管理費約2割を削減すると同時に三菱商事に支援を要請。また山東理二社長をトップとする対策チームや戦略・リスク統合本部の新設、第三者による受注案件監査などで、巨額損失を防止する措置を講じるという。
海外プラント事業が予想外の不採算に陥るケースは、原子力発電所工事で苦しんだ東芝をはじめ多くの例がある。しかし、こうしたリスクは日本企業がインフラ事業を広げていく上で、乗り越えなければならない課題だ。千代田化工と関係者が結束して、難局克服の手本になることを期待する。
(2018/11/13 05:00)