[ オピニオン ]

社説/日本、造船WTO提訴 韓国、大規模助成を止めるべき

(2018/11/9 05:00)

市場原理を無視した公的支援は看過できない。韓国政府は自国の大手造船業への政府系金融機関を通じた大規模助成を即刻止めるべきだ。

政府は韓国に対し、自国造船企業への過剰な公的助成が国際貿易ルールに違反しているとして世界貿易機関(WTO)提訴の前提となる2国間協議を要請した。WTO補助金協定では他の加盟国の利益に対する著しい悪影響を及ぼす公的資金支援を廃止勧告の対象と規定する。

韓国造船業は近年、海洋プラントの不振や新造船価の低迷などで経営が大幅に悪化した。韓国政府は経営難に陥った大宇造船海洋の救済のための大規模金融支援や実質的に赤字受注を容認する前受け金返還保証の発給などで側面支援している。

日本政府は経済協力開発機構(OECD)造船部会などさまざまな場面で問題提起してきたが、韓国は政府の介入を否定し、国際ルールに抵触しないと主張。10月に開いた国土交通省と韓国通商産業資源部の局長級会議も物別れに終わった。

日本造船工業会の加藤泰彦会長(三井E&Sホールディングス相談役)は韓国の公的助成策について「市場原理によって淘汰(とうた)されるべき過剰な造船設備をいたずらに延命させることで市場競争を歪曲し、造船市況の回復を妨げ、世界の造船業に多大な損失をもたらす」と懸念を表明。かねて国土交通相にWTOの紛争解決手続きに基づく早急な問題解決を求めてきた。

経営が悪化した造船所が政府支援を受け過剰設備を温存し、無理な受注に走れば船価は回復しない。10月に開催された日本、欧州、中国、韓国、米国の5極造船首脳会議(JECKU)でも公正な競争に向けた商業的慣行について世界的規律が不可欠であるとの認識で一致した。

造船市場の世界シェア(17年竣工ベース)は日本20%、韓国34%、中国36%と3カ国で9割を占める。韓国はリーダー国の一角としての誇りを持ち、市場原理を無視した政府支援を止め、自国造船業が持続的に国際競争力を保持できる技術開発や生産性改革に目を向けてほしい。

(2018/11/9 05:00)

総合4のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

↓もっと見る

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン