[ オピニオン ]
(2018/12/20 05:00)
行政サービスの電子化に政府が今度こそ、本気で取り組むらしい。デジタル技術の活用によって利便性が高まることは歓迎だが、国民すべてがその効果を実感できる改革を期待する。
「デジタル・ガバメント」を先導する形で経済産業省では、複数の法人向け行政手続きをひとつのIDで申請できる法人共通認証基盤の構築や補助金申請システムの開発が進む。申請に必要な添付書類を揃えるため、開庁時間に合わせて役所の窓口をいくつも回るといった不便さは解消されそうだ。
一度行政に提出した情報は、再び記載する必要がない「ワンスオンリー」もビジネスには朗報だ。政府はこうした法人向け行政手続きを、最終的にはすべてデジタルで完結する計画だ。
少子高齢化に直面する日本にとって、デジタル化によって効率を高め社会全体の生産性を高めることは喫緊の課題である。ただ、急激な変化を前に、シニア世代などインターネットやデジタル機器になじみの薄い層がその流れから取り残されるようなことがあってはならない。とりわけ中小企業は経営者の高齢化が進む。補助金申請などで戸惑うことがないよう、きめの細かいフォローも欠かせない。
行政手続きの電子化をめぐっては、過去にもさまざまな構想が打ち出されてきた。森喜朗政権下で、世界最先端のIT国家を目指すとした「e―Japan戦略」では、ブロードバンド環境などインフラ整備は大きく進展したものの、ビジネス環境の改善では利用者が効果を実感するには至らなかった。こうした反省を踏まえ、政府が2018年1月に策定した「デジタルガバメント実行計画」では、デジタル化そのものが目的ではなく、利用者のニーズから出発する「サービスデザイン志向」を掲げている。民間ビジネスでは当然の発想である。
政策担当者のひとりは、今回の改革について「過去の施策の不徹底さにけりをつける」と言い切る。19年度から経産省の行政手続きで試行する法人向けの新たなプラットフォームはその試金石となる。
(2018/12/20 05:00)