[ オピニオン ]
(2019/4/11 05:00)
頑丈そうなあごに張り出した眉(まゆ)。がっしりとした体格のスーツ姿の男性が通路にたたずむ。実はこれ、ネアンデルタール人の復元模型だ。
訪ねたのは、ドイツ・デュッセルドルフ郊外のネアンデルタール博物館。1856年に洞くつで「人骨」が発見されたネアンデル渓谷のそばにある。
入場料11ユーロを払い、進化論を模したらせん状のスロープを昇っていくと、発見の経緯からヒトの起源、人類社会の発達の足跡までフロアごとにたどれる趣向。日本語の解説書もある。
とあるコーナーでは、哲学者カントの有名な問いかけが床に刻まれているのを目にしてどきっとした。「人間とは何だろうか」「わたしは何をすべきなのだろうか」。ベストセラーとなったユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』『ホモ・デウス』、それにダン・ブラウンの『オリジン』の「我々はどこから来て、どこへ行くのか」という深遠なテーマとも相通じる。
人工知能(AI)などの急速な発展で将来どんな世界が待ち受けているのか、期待の一方で不安も尽きない。仕切り壁に両腕をもたれかけた先の復元模型の視線は宙を漂ったまま、行きつく先を永遠に失っている。絶滅した彼らから学ぶべきことは多い。
(2019/4/11 05:00)