社説/デジタル化と就労 NPOと連携し、息長く支援を

(2020/7/22 05:00)

デジタル化の進展に伴う人材のスキルギャップを是正するには、ITの知識や新しいビジネススキルの習得を社会全体で支援する仕組み作りが重要だ。

人工知能(AI)などのデジタル化の促進により、失われる仕事はあるが、新しい仕事も生まれる。労働市場の変化は時代のすう勢とはいえ、新陳代謝が急速に進むと、社会に歪みが生じる。スキルギャップによる社会格差は全世界的な課題にもなっている。

米IBMの調査によると、2030年までに「適切なスキル」を持った人材の不足が全世界で8500万人に上ると予測する。労働人口が減少するわが国でも人手不足は喫緊の課題だが、企業の人事担当は「適切な職務経験やスキルを持った人材を見つけることが難しい」と口をそろえる。その背景には人材のミスマッチもあるが、就職氷河期世代の非正規雇用といった社会課題も横たわる。

海外では企業と民間非営利団体(NPO)が協力し、移民や難民、未就労の若者らのスキルの習得を支援し、就労を促進する草の根の社会貢献活動が脚光を浴びている。

IBMが19年から始めた社会貢献施策「スキルズビルド」はその先駆モデルであり、現在までにフランスや英国、インドなど10カ国以上に展開している。このほど日本IBMが国内展開に乗り出した。

日本IBMと一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(東京都港区)が手を組み、NPOや自治体が紹介する非正規雇用の若者らに対し、社内ボランティアによる学習相談や無償のオンライン学習教材などの提供を始めた。

国内IT業界では、NECが社員の持つ専門知識を生かしたボランティアとして、NPOや地域が抱える課題解決に役立てる活動を行っている。最近は、自治体からIT人材育成への協力要請も増えているという。

企業とNPOが連携することで「草の根の社会貢献活動が息長く継続できる」(日本IBM)。支援の輪を広げ、日本のデジタル力を高めてほしい。

(2020/7/22 05:00)

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