社説/欧州復興基金で合意 自由貿易維持へ日本も協調を

(2020/7/23 05:00)

欧州連合(EU)の結束をぎりぎりで保てた合意だ。しかし、加盟各国間の利害の衝突は内在している。英国離脱後のリーダー役であるドイツ、フランスの力量が試されている。

EUは首脳会議で、新型コロナウイルス感染症で打撃を受けた経済復興のための基金創設で合意した。総額7500億ユーロ(約92兆円)という大型基金だ。

基金創設を巡って議論は紛糾した。コロナ禍で大きな被害を受け財政余力の少ないイタリアやスペインなどが、補助金による支援を求めたのに対し、自国の財政規律を守り、倹約国と言われるオランダやオーストリアなどが、返済が必要な融資でなければ応じられないとし、一時は膠着(こうちゃく)状態となった。

基金の当初案は補助金の割合が7割弱だったが、最終的に補助金3900億ユーロ、融資3600億ユーロでまとまった。独メルケル首相が自国で反対論もある基金構想受け入れを決断し、仲裁に乗り出したことが大きい。

コロナ禍は当初、EUの連帯を傷つけた。感染拡大でEUの信条である人の往来の自由を排した。医療崩壊を招いたイタリアからの救いの声にも、各国は自国の対応を優先した。基金創設が実現できなければ、EUにとって今後の結束が問われる事態と言われていた。

ただ、首脳同士では合意したものの、加盟各国の国民の意識には不満がくすぶっている。主に支援を受けるイタリア、スペインなどには、資金の使途に厳しい条件がつけられる。条件を順守しながら、自国の財政再建と経済復興をはかるには、国民にも負担を強いることになる。

EUは復興に向け、温暖化対策やデジタル化に重点投資する「グリーンリカバリー」を掲げる。エネルギーや物資を大量生産・大量廃棄する経済活動からの脱却を目指すという。

日本にとってEUは、自由貿易体制のパートナーである。米中の経済対立や保護主義が台頭するなかで、連携の重要さは増している。EUが目指す新たな経済活動も、日本と共通する点は多い。日EUの協調で難局を乗り越えてもらいたい。

(2020/7/23 05:00)

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