(2020/8/14 05:00)
使用済みプラスチックを高品質な材料として再利用するケミカルリサイクルの取り組みが進んでいる。民間の英知を集め、官が政策で支援して成果を上げてもらいたい。
日本の使用済みプラは年間約900万トン発生し、リサイクル率は86%。熱や蒸気として回収するサーマルリサイクルが58%と大半で、ペレットなどに溶融加工するマテリアルリサイクルが23%、バージン材と同等品質に戻すケミカルリサイクルは4%と低い。ケミカルリサイクル比率の引き上げが、資源の有効利用で課題とされている。
サントリーホールディングス(HD)、東洋紡、レンゴーなど異業種12社はこのほど、使用済みプラの再資源化事業で連携すると発表した。米ベンチャーの技術を用い、ケミカルリサイクルの中でも、油化工程を経ずにキシレンやエチレンなどの直接原料に戻す手法で実用化を目指すという。
実現すれば、従来技術で課題だった製造コストの低減につながる可能性がある。新浪剛史サントリーHD社長は「実用化は2027年の計画だが、1年でも2年でも早く実現したい」と話している。
化学業界では、住友化学が室蘭工業大学と、三菱ケミカルがENEOSと連携し、効率的なケミカルリサイクルのプロセス開発に着手している。
ケミカルリサイクル拡大の課題は、コストと安定した回収ルートの確立だ。リサイクルで先行するPET樹脂は、すでに安定調達が困難となっている。
政府はリサイクルが義務付けられている容器包装プラに加え、さまざまな使用済みプラを家庭から一括回収する方針で、今後市町村と協議に入る。実現には回収費用を誰がどう負担するのかなど課題も多い。品質が比較的安定している産業系廃プラの回収システムも必要だ。
ただ、すべての使用済みプラをケミカルリサイクルに回すのはコスト面で得策ではない。既存のサーマル・マテリアルリサイクルも効率向上に磨きを掛け、トータルでリサイクル率100%を目指してほしい。
(2020/8/14 05:00)
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