(2021/3/3 05:00)
溶接作業を行う全国の事業所に影響が及ぶ規制が始まる。国は制度の周知を徹底し、企業の取り組みを促してもらいたい。
金属アーク溶接作業で発生する溶接ヒューム(金属の微粒子)が、4月に健康障害を起こす可能性のある化学物質、特定化学物質(特化物)に指定される。溶接ヒュームやその中に含まれるマンガンが、神経障害や肺がんの原因になる恐れがあると確認された。既に欧米で規制措置がとられ、日本も厚生労働省が労働安全衛生法などを改正し、規制に乗り出した。
法改正により、国内に多数存在する溶接作業を行う事業所にさまざまな対応が求められる。
屋内作業の場合、換気装置などの設置で建物内の溶接ヒュームを希釈・減少させるか、または局所排気装置の設置などが必要になる。作業場内の溶接ヒューム濃度の測定とデータの保存が義務づけられ、作業時に装着するマスクも、濃度に応じたマスクの選択が必要になる。
また、溶接作業を行う労働者への年2回の特殊健康診断の実施や、特化物の取り扱いに関する技能講習を修了したものから作業主任者を選任することも求められる。その他細かな実施規則がたくさんある。
いずれも企業には、資金面・作業量とも負担が増すものだが、違反すれば罰則も科される。
規制導入まで1カ月を切ったものの、企業に周知が行き届いていないことが心配だ。企業の労働安全対策を支援する団体、中央労働災害防止協会には最近になって相談が急増している。小規模企業は、自社が規制の対象となるかが不明で、具体的な対応策も、いつまでに何をしなければならないかが分からないといった声も上がっている。
厚労省は全国の労働基準監督署や溶接関連団体などと協力して周知活動を進めているが、コロナ禍で大規模な説明会も実施しづらい状況にある。
社員の健康を守るのは企業の責務である。自社がとるべき対応を確認し、着実な実施を進めなければならない。厚労省など国は、企業の取り組みを支援する措置も講じてもらいたい。
(2021/3/3 05:00)
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