社説/外国人技能実習制度の活用 労働力の補填に終わらせるな

(2021/3/26 05:00)

外国人技能実習制度を正しく理解し、長期戦略で外国人材採用や企業価値向上など新たな価値を創出したい。

同制度は1993年、国際協力を目的に創設された。途上国などから外国人を一定期間受け入れ、習得した技能や知識を母国で活用してもらう。

技能実習1号(1年目)の在留資格による新規入国者数は増加を続け、2019年は約17万人と18年比で2割増えた。製造業では外国人労働者の半数近くを技能実習生が占める。

だがコロナ禍で失職するケースが後を絶たず、一部の心ない企業により制度の信頼性が損なわれる懸念がある。受け入れた企業は「技能実習を期限まで継続する責任がある」と法律にも明記されている。雇用調整助成金を活用するなど実習継続に努力すべきだ。

受け入れ企業は「労働力の確保」、実習生は「出稼ぎ」が目的という関係性だけでは不況の影響を受けやすい。制度の魅力や持続性を高めるには受け入れ企業が長期戦略の下で新たな価値を創出し、技能移転を通じた国際協力という本来の趣旨に実態を近づけていく必要がある。

精密金型部品加工のリード技研(川崎市多摩区)は15年にベトナム工場を設立。ベトナム人を技能実習生として日本で指導・育成してから現地工場で採用する好循環を生み出している。

海外展開に結びつけなくても「技能習得に熱心な実習生が日本人社員の意欲を高め、多能工化を進めやすくなった」「職場の雰囲気が明るくなった」などの効果が表れている。国は成功例を抽出し、制度の可能性を企業に提示してほしい。

少子高齢化で就労人口の減少が避けられない中、外国人労働者の活用が頼みの綱となる中小企業も多い。だが、19年に外国人を労働者として受け入れる特定技能制度も始まったが、活用は進んでいない。

日本は外国人を雇用の調整弁に使う国だ、という評判が立てば、優秀な人材は得られなくなる。コロナ収束後の景気回復に備え、労働力の補填から踏み出す準備を進めたい。

(2021/3/26 05:00)

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