産業春秋／消費税の総額表示

１日から店頭は「総額表示」。小売り価格の表示が消費税込みになる。９８０円など税抜き値札で割安感を誘っていた店は消費者に値上げととられかねず、頭が痛い。

昨夜、都内の大型ショッピングセンターで表示状況を調べてみた。出店する店の半数以上はすでに総額表示に変わっていたが、税抜き表示も少なくない。きょう中にはそれも変更しなければならず、徹夜作業になるかも。

特売のセーターを税込み価格「１９９０円」としている店があり、苦心が見て取れた。ユニクロやＧＵを展開するファーストリテイリングは、税抜き価格をそのまま税込みにする値下げに踏み切った。体力のある企業ならこうした対応もできる。消費者へのアピール効果も絶大だ。

財務省は総額表示義務について「支払額が一目で分かるようにするため」と説明している。だが２００４年４月に一度は総額表示を義務化しながら、小売業界の反発で「特例」として今の税別表示を認めた歴史を忘れてはならない。

いつかやってくる次の消費増税時に、国民に痛税感を意識させないため―という思惑も透けてみえる。税額に惑わされず、価値ある商品を選んで財布を開く賢い消費者になりたい。