(2021/5/26 05:00)
コロナ禍は多くの中小企業に影響を及ぼした。ただ、何もせず収束を待つだけでは、成長の機会を逸してしまう。
経済産業省・中小企業庁は「21年版中小企業白書」で、新型コロナウイルス感染症が中小企業の経営に及ぼす影響や、危機克服への企業努力の実態をまとめた。
それによると、「コロナ感染症による企業活動への影響が継続している」との回答が全体の71・3%と、多くの企業が何らかの影響を受け続けていることが分かった。一方で感染症流行による事業環境変化の中で売上高の回復が「十分にできている」企業が63・1%、「全くできていない」が24・6%だった。
事業変化に対応できている企業は、新製品・サービスの開発提供や新事業分野への進出などを積極的に実施した割合が7割近くあった。コロナ禍で事業に悪影響がある中でも、創意と工夫で危機を乗り切ろうと努力する企業は回復度合いが高いことが明らかになった。
売り上げ減少対策というだけでなく、コロナ禍を事業再構築の機会ととらえ、自社の事業を大胆に見直す動きも見られた。中でもデジタル化への優先順位を高くする企業が、コロナ流行前は全体の4割強だったのが、流行後は6割強に高まった。
日本経済は製造業を中心に回復傾向にある一方、外食産業や宿泊、運輸関連などサービス業は需要が停滞する二極化状態にある。財務状況が脆弱(ぜいじゃく)な中小企業の中には、存亡の機にあるところも少なくない。
企業倒産の件数は低水準にとどまっているが、これは政府による実質無利子・無担保融資制度や一連の給付金が下支えをしているからで、一時的なものに過ぎない。
白書には、飲食店経営からペットフードの企画開発に転じた企業や、酒造会社が飲食店向けの激減を地域の個人消費で回復させたものなど、多数の事例が紹介されている。
苦しい中にあっても、自ら変革に取り組む企業には新たな成長の機会は訪れる。歯を食いしばり前を向いて進んでほしい。
(2021/5/26 05:00)
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