産業春秋／さよなら太閤園

２０１９年のＧ２０大阪サミットで閣僚会合に使われるなど、大阪の迎賓館の役割を果たしてきた太閤園（大阪市都島区）が、きょう営業を終了する。

明治時代に関西財閥を代表する藤田伝三郎男爵が、子息のために屋敷や広大な庭園を築造、１９５９年に藤田観光がその旧邸宅などを活用して太閤園を開業した。和風建築として歴史的価値の高い料亭「淀川邸」など、関西を代表する“おもてなしの場”だった。

「太閤園は地元の誇り」―。太閤園に隣接して立地する米島フエルト産業社長の米島智哉さんは、残念な思いでこう語る。同社は羊毛フエルトからスマホ部品や新素材へと事業を広げる。「海外顧客を太閤園でもてなすと、必ず喜んでもらえた」と、サービスの高さに信頼を寄せていた。

米島さんの結婚式も太閤園で挙げたのだという。太閤園は売却が決まっているが、今後の活用策はまだ明らかになっていない。「最後に社員を連れて食事に行きたいところだったが、コロナでそれも難しい」。

大阪はまん延防止等重点措置が続き、太閤園も人数制限や２０時までの時短営業が続く。多くの人が名残を惜しみたいのに、それすらも制限される。コロナ禍が本当に恨めしい。