産業春秋／安心安全な大会に

「このような大変な時期にオリンピックを開催して、僕たち選手はありがたい」。柔道男子６６キロ級の阿部一二三選手は、優勝直後のインタビューで最初に感謝の気持ちを表した。東京五輪が開幕し、毎日熱戦が続く。

見事にメダルを手にした選手がいる一方で、予選敗退で不本意なまま大会を終える選手もいる。その誰もがこの日のために、努力を重ねてきた。

五輪の開催をめぐっては、さまざまな意見があるのは確かだが、競技に人生をかけて挑む選手たちの真摯（しんし）な姿を見れば、やはり開催の決断をしてよかったと思う。

新型コロナウイルス感染症対策に加え、酷暑が選手たちを苦しめている。鍛え抜いた身体を誇る選手にとっても、日本の酷暑は耐えがたい。テニス競技では、合間に体を冷やす休憩時間を設ける特別ルールが急きょ導入された。

きょうから明日にかけ、関東甲信や東北地方を台風８号が襲う。コロナと熱中症対策だけでも大変なのに台風まで。すでにボート競技やアーチェリーは日程変更が決まった。他の競技は現状では実施する予定という。大会関係者の苦労は絶えないが、安全安心な運営を守り抜き、選手が全力を出し切れる環境整備に力を尽くしてほしい。