社説/コロナ禍と財政健全化 実態直視し黒字化目標再策定を

(2021/8/3 05:00)

現実的な国・地方のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)黒字化達成目標を、改めて策定すべきだ。

内閣府は国・地方のPB黒字化の実現時期について、実質2%程度、名目3%程度を上回る高成長率を実現する「成長実現ケース」で2027年度と試算し、1月試算の29年度から2年前倒しした。見通しの甘さはぬぐえない。

政府が黒字化目標としている25年度は2兆9000億円の赤字、27年度は1兆8000億円の黒字になるとした。コロナ禍で大規模な予算編成を行った20年度のPBの赤字額が、1月試算の69兆4000億円から56兆4000億円に縮小した。これは20年度の国の税収が過去最高の60兆8216億円と上振れたためだが、PBの黒字化前倒しも経済成長による税収増が続くことを根拠にしている。

目標達成には歳出改革の継続が不可欠だ。実質1%程度、名目1%台前半程度の「ベースラインケース」では、25年度は7兆9000億円の赤字、27年度も6兆2000億円の赤字になる。こちらが実態を反映した数字なのではないか。

経済再生のためには成長分野への投資は怠ってはならない。8月末に締め切られる22年度予算概算要求では、グリーン、デジタル、地方活性化、子育て支援の成長4分野に優先して予算配分する特別枠を設けた。財務省は政策判断で増減させやすい公共事業や教育などの裁量的経費について、21年度予算の14兆9000億円から10%削減を各省庁に要請。各省庁は削減額の3倍まで特別枠として要求できる。この特別枠への要求が膨らめば、「10%削減」でも財政規律は保たれない。

コロナ禍で22年度予算案の編成も大規模な財政出動が予想される。秋の総選挙後には大型補正予算案の編成も想定されている。本予算を取り繕うだけでは、真の財政健全化は遠のくばかりだ。踏み込み不足の社会保障制度改革にどこまでメスを入れられるか。現実的な目標の下、経済再生と財政健全化の「二兎」を追ってほしい。

(2021/8/3 05:00)

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