産業春秋／秋風到来

９月に入り、東京は気温が突然大幅に下がった。朝、窓を開けると涼しい風が一気に部屋に吹き込む。久々にエアコンのスイッチを押すことがない一日の始まりだ。

「秋の空は七度半変わる」ということわざがあるように、今月中は残暑がぶり返したり台風が襲来したりと、お天気はめまぐるしく変わるだろう。しばらくは涼しさを堪能したい。

永田町には、局地的に嵐が巻き起こっている。９月中旬の衆院解散、総選挙案が突如浮上した。菅義偉首相は「新型コロナウイルス感染症対策が最優先。今のような厳しい状況で（衆院を）解散できるわけがない」と否定に追われた。

来週には自民党役員人事が行われ、二階俊博幹事長などの交代が取り沙汰される。「次の幹事長候補は誰だ」「とにかく菅首相では選挙が戦えない」…。選挙で当落線上を自覚する若手議員を中心に、嵐は収まる気配がない。

しょせんは自民党というコップの中の嵐に過ぎない。議員としての命より、適切な医療を受けられずに自宅で苦しむ感染者のリアルな命の問題の方がはるかに重要なのはいうまでもないことだ。国民と政権与党の間に「秋風」ならぬ「飽き風」が吹いていることに気が付かないのか。