(2021/9/10 05:00)
生物の力を活用して、高機能品を生産する「バイオものづくり」。持続可能な生産技術として、世界で事業化への取り組みが進んでいる。日本も成功事例を積み重ね、市場規模を拡大させたい。
植物や微生物が持つ物質を生産する能力を、最大限引き出し、材料や製品を生産する技術は、「スマートセル」や「バイオものづくり」として近年注目されている。
蚕がつくる繭から絹糸を取り出したり、こうじ菌と大豆からみそを造るなど、昔からある生物を利用して人間に有用なものを作る手法も、広義にはバイオものづくりである。
これに対し、人工知能(AI)や分子構造をあらかじめ設計するマテリアルインフォマティクスなどの最先端技術を駆使し、生物の力を極限まで大きくすることで、工業的に有用な素材や、希少な素材、化石資源の代替となるものを生産するのが、現代のバイオものづくりと定義されるものだ。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や経済安全保障に資する技術として、欧米で取り組みが加速する。
日本も新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援でさまざまなプロジェクトが立ち上がっている。住友化学が大阪大学と組んで、これまで中国産に頼っていた医薬品の原料になるグリチルレチン酸を、微生物発酵で安価に生産する技術を開発する。東レはポリアミド(ナイロン)を、化石資源由来から、植物原料に置き換えて生産する技術開発に着手した。このほか、生物から耐熱性に優れたフィルム素材を生産する取り組みなども進んでいる。
いずれも産業化には大量生産技術やコスト低減など課題は多い。ただ、日本は機能性化学の有力企業と、ユーザーとなりうる自動車や電機メーカーなどが多数存在する。両者のニーズとシーズを早い段階からマッチングし、具体的な成果を生み出すことが重要だ。
資源に乏しい国だからこそ、生物の力を借りる新技術に挑戦したい。
(2021/9/10 05:00)
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