(2021/10/28 05:00)
気候危機は目の前にある。対立から抜け出し、世界が脱炭素に取り組む具体策が必要だ。
国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が31日、英グラスゴーで始まる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人間活動が温暖化に影響を及ぼしたのは「疑う余地がない」と初めて断言した。今世紀末の気温上昇を、産業革命前より2度C未満、極力1・5度C未満とするためには、これからの10年間が決定的に重要と言われている。
その意味でCOP26は、世界が地球温暖化を止める具体的な行動を始める上で極めて重い課題を背負った会議となる。
過去のCOPが十分な成果を見いだせなかったのは、途上国と先進国間の対立や、主要排出国である米国の離脱が大きい。米国が本格的に復帰し、議論を進める体制は整った。
課題は大きく三つ。参加各国からの「野心的な」削減目標の表明、二国間による排出削減のルール形成、途上国への資金支援である。
途上国は先進国全体で年間1000億ドルの資金支援が必要としているが、2019年は約800億ドルに留まっている。先進国がより踏み込んだ支援策が示せるかが議論を前進させるカギとなる。
二国間による削減取り組み、いわゆる6条(市場メカニズム)ルールは、排出削減に資する技術や投資を途上国で実施し、削減量を双方の国で分け合うというもの。世界全体の排出削減と同時にそれぞれの国の経済成長にも結びつく。削減量の二重計上防止が争点となる。日本にとってこのルール形成は死活的に重要である。率先して合意形成に役割を果たすべきだ。
温暖化が我々の生活に及ぼす悪影響は年々深刻さを増している。一部の識者の中には、「経済成長を止めるべきだ」という極端な意見もある。しかし、温暖化防止には、イノベーションと投資が不可欠なのは明らかである。COP26が、地球全体が持続可能な将来を持ち続けられる具体的な成果を上げる場となることに期待したい。
(2021/10/28 05:00)