(2021/11/4 05:00)
「成長と分配の好循環」をはかるには、中小企業の役割が重要だ。変化に迅速に対応し、地域経済をけん引する強い中堅・中小企業の育成策を考えなければならない。
岸田文雄首相は11月中旬に新たな経済対策を策定し、対策費を盛り込んだ2021年度補正予算を、年内のできるだけ早期に成立させる方針を示した。経済対策の規模は数十兆円となる見込み。
企業や個人事業主向けの給付金については、地域業種を問わず、持続化給付金並みの措置を講じる。同時に雇用調整助成金の特例措置を22年3月まで延長する方針。持続化給付金をめぐっては、不正受給が多発した。迅速な給付のためにやむを得ない面もあったが、納税証明などを活用し、真に必要な企業や事業主に確実に給付する措置を考えてもらいたい。
非正規雇用や子育て世代で困窮する世帯に対しては、プッシュ型の現金給付を行う。迅速な支給が重要だ。住民税の納税猶予世帯や児童手当の支給口座などを活用し、早期に実行してもらいたい。ただ、困窮から抜け出すには、安定した雇用と所得拡大が本筋である。給付型職業訓練の充実など、スキル向上策も同時に検討すべきだ。
これらの措置と並行し、コロナ後の日本経済を支える柱を育成していかなければならない。22年度予算編成においては、雇用の7割を担う中堅・中小企業の活力をいかに上げていくかに政策の重点を置くべきだ。
独自の技術を武器に世界で戦えるグローバルニッチトップ企業への重点支援策や、高騰する原材料価格の転嫁を厳しく監視する下請け取引適正化など、硬軟とりまぜた対応策が必要だ。
飲食や観光、運輸などコロナ禍で痛手を負った業種は、事業再構築や大胆な事業転換を促す施策とともに、先行きが見通せない企業に円滑な退出を促す支援策も講じ、企業の新陳代謝をはかることも考えるべきだ。
強い中小企業の存在が、世帯の困窮対策と密接に連関することを踏まえ、中長期の視点で施策を検討してもらいたい。
(2021/11/4 05:00)