(2021/11/23 05:00)
緊急対策だけではなく、国際協調による価格安定と長期的な省エネルギー政策が重要だ。
経済産業省・資源エネルギー庁は、最近の国際的な原油価格の高騰に対する激変緩和措置を決めた。ガソリンの市販価格が全国平均で1リットル当たり170円を超えた場合、最大5円を政府予算から補填(ほてん)する。
最初の170円から月ごとに1円ずつ切り上げる。年内に制度をスタートし、3月までの時限措置とする。短期間かつ限られた補助であり、あくまで市場が原油高騰を受け入れられるまでの措置という。
特徴的なのは直接、ガソリン販売店に支給するのではなく、石油元売りの卸価格への補助金としたことだ。元売りの直営以外の販売店が店頭価格を下げない可能性もある。エネ庁はすべての販売店で価格をモニタリングするというが、実効性は乏しいと言わざるを得ない。
原油価格の急騰は、コロナ禍で傷ついた国内経済に打撃を与える恐れがある。これに何らかの手を打つ必要を感じたことは理解できる。しかし新制度は複雑で、テクニカルに過ぎるきらいがある。国民や産業界への周知が行き届くかどうかは不透明だ。石油業界からは突然の施策に困惑する声も聞かれる。
農漁業や運輸業、北海道など暖房が重要な地域では経産省の新制度と別の公的支援があり、補正予算で手当てする予定。また、この制度が補助するのはガソリンと軽油、灯油、重油だけで、電力やガスなどは対象外だ。不公平感はぬぐえまい。
政府が取り組むべきは、短期的には各国と協調して産油国に増産を要望し、国際価格の安定を図ることだ。また原油の国内備蓄の一部を需給対策として利用する仕組みを準備することも考えられよう。すでに備蓄放出の一部情報が、原油先物価格の低下に影響している。
とはいえ市場価格を、長期的に国がコントロールすることはできない。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換や省エネルギー対策をこれまで以上に重視し、原油価格の変動に強い社会を構築していく必要がある。
(2021/11/23 05:00)
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