(2022/1/24 05:00)
米国のインフレに歯止めがかからず、金融引き締めに動いている。米経済の動向は世界経済に大きく影響する。
米労働省が先日発表した2021年12月の消費者物価指数は7・1%と39年6カ月ぶりの高い水準を記録した。これは前年同月に比べて7・0ポイントの急上昇。コロナ禍からの回復による経済活動の再開で需要が急回復した半面、供給には依然として制約が残っているため、需給のアンバランスが物価上昇を招いたのが最大の要因だ。
巨額の財政支出もインフレにつながった。大型給付金を支給したトランプ政権の後を受けたバイデン政権も21年、「米国救済計画」と称して2兆ドル近い大規模支出を決めた。当時から「過度な財政支出はインフレを招く」と指摘されており、それが現実となったともいえる。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、1年前までは「23年末まで政策金利をゼロ近辺に据え置く」との見通しだった。しかし、インフレ進行に伴って21年12月には「22年3月に米国債などの市場からの買い入れを終了し、22年中に3回程度の利上げを行う」との見通しを示した。金融引き締めにカジを切った。
米国の利上げは日米の金利差を拡大させるため、ドル高円安を招きやすい。通常、円安は日本の輸出企業にとってプラス材料とされる。しかし過度な円安は、原材料やエネルギーなどの輸入価格を押し上げる悪影響の方が大きいため「悪い円安」とされる。
また過去には米国の金融引き締めを受けて、新興国から資金が大量に米国へ流出し、通貨危機となって世界経済の不安材料となったこともある。今回も同様のことが懸念される。
加えて金利引き上げのタイミングを誤ると、回復過程にある米国景気自体も足を引っ張られかねない。
FRBはもちろん、こうした危険に配慮しているだろう。ただ支持率低下に悩むバイデン政権がさらに極端な政策を打ち出せば、景気に変調を来す恐れが大きい。しばらくは米国のインフレ対策から目が離せない。
(2022/1/24 05:00)
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