(2022/3/21 05:00)
中小企業の賃上げ実現は、適正な価格転嫁がカギを握る。
2022年の春季労使交渉(春闘)の集中回答で、大手の自動車や電機各社で満額回答が相次ぐなど、予想を超える結果となった。ただ、新型コロナウイルスの感染収束は遠く、物価高、ロシアのウクライナ侵攻など不透明要因が影を落とす。
春闘全体に影響力をもつトヨタ自動車が集中回答日である3月16日の1週間前に、満額回答で労働組合と妥結した。日産自動車、ホンダなど大手自動車メーカー、日立製作所や東芝、NECといった電機メーカーも満額回答で続くなど、大手の賃上げ回答は好調だった。物価の上昇が家計を脅かしており、経営側も社員の生活を賃上げで支える意思がうかがえる。
問題はこうした賃上げの流れが、中小にも波及するかだ。多くの企業が不安要素として物価高を懸念する。ガソリン価格は原油価格の高止まりで、約13年半ぶりの高水準となっている。電気料金も、大手電力10社とも比較できる過去5年間で最も高い水準だ。
エネルギーや原材料の高騰が、これから本格化する中小企業の労使協議で、賃上げの懸念材料になる恐れもある。
中堅・中小の電機、機械メーカーで構成する産業別労働組合のものづくり産業労働組合(JAM)の安河内賢弘会長は、「今後中小が大手を上回る回答を得るには、価格転嫁が欠かせない」とし、大手による買いたたきの動きをけん制する。
発注企業と受注企業とが、共存共栄の取り組みや取引条件の適正化を代表者の名前で宣言する「パートナーシップ構築宣言」や公正取引委員会による優越的地位の乱用への取り締まり強化などが欠かせない。
しかし、大手と中小間の取引ではどうしても大手が優位になりがち。価格交渉は企業間で行うのが大前提だが、不当な買いたたきと批判されないよう第三者が客観的な数値を示し、それに基づく取引価格を決めるなどの仕組みも検討すべきだ。中小の賃上げに向けた官民の環境整備づくりが求められている。
(2022/3/21 05:00)
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