(2022/5/5 05:00)
コロナ禍の長期化に伴い、若い世代の出生意欲の低下が深刻な問題となりつつある。子育て支援に軸足を置いた少子化対策は見直しを迫られそうだ。
コロナの国内感染が始まった2020年の出生数は84万835人で1899年の調査開始以来最少。21年の確定数は81万人程度になると見込まれる。
出生数の減少率は15年まで年率1%と比較的緩やかに推移していた。だが16年に100万人を割り込んで以降は同3・5%へと下げ足を速め、わずか6年間で約20万人の減少に。この基調が継続すると25年には74万人程度になると予測できる。
急減に転じたのは、出産期の女性数減少や婚姻率の低下に加えて、有配偶出生率が低下したのが要因といえる。20年は約7000人の押し下げに働いた。 背景には「若い世代の出生意欲の低下がある」と、日本総合研究所上席主任研究員の藤波匠氏は推察する。子どもはいらない、1人で十分と考える夫婦が増える傾向にあるという。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、夫婦の無子・少子希望割合は漸増傾向にある。15年調査では2割近くに達し、今夏公表される21年調査では増加に拍車がかかりそうだ。 コロナ禍で婚姻数が減少しているうえに、経済環境の悪化による収入減少で出生意欲は一段と低下する懸念がある。
コロナ感染が落ち着いてもリモートワークなど男女の出会いの機会が少ない働き方が常態化するケースも予想される。企業は食事会やクラブ活動、社員旅行など対面による出会いの機会を積極的に増やす必要がある。 出生意欲を高める政策も急がれる。若い世代の所得向上につながる産業振興は言うに及ばず、社会保障改革などで将来不安の解消に努めたい。学校教育で乳幼児との触れ合い体験ができる機会を提供している自治体もあり、広がりを期待する。
少子化による人口減少を前提に縮小均衡の国づくりを論じるのは万策尽きてからにしたい。官民挙げて出生意欲の向上に知恵を絞り、矢継ぎ早に対策を打ち出していくしかない。
(2022/5/5 05:00)