社説/台湾防衛、軍事介入の真意 米、踏み込むも「曖昧さ」残る

(2022/5/25 05:00)

 バイデン米大統領は23日の日米首脳会談後の会見で、中国による台湾侵攻の際、米国が軍事介入するかを問われ「イエス」と明言した。米国が、直接的な軍事介入を避けているウクライナ以上に、台湾を重視していると受け取れる発言だ。ただ軍事関与とは正規軍の派遣まで踏み込むことなのか、台湾への武器、資金の供与にとどまるのか。「戦略的曖昧さ」を一部残しつつ中国をけん制したと言える。

 日米首脳会談では台湾海峡の平和と安定を重視する従来の対中戦略を確認した。戦略転換とも受け取れるバイデン大統領の会見での発言を受け、ホワイトハウス高官は台湾をめぐる政策に変更はないと釈明した。バイデン大統領の失言なのか、あるいは武器や資金供与にとどまるのならウクライナ支援と変わらない。いずれにしても公の席での大統領発言は重大だ。

 米国はこれまで台湾への軍事関与の可能性について、玉虫色の戦略的曖昧さを貫き、中国を過度に刺激することを避けてきた。だが欧州で安全保障が脅かされているウクライナ情勢は、中国による台湾有事を想起させる。また台湾は世界の先端半導体の9割を生産し、中国の対米防衛線「第1列島線」に位置する戦略的な重要地域でもある。高まるインド太平洋地域での安全保障への危機感が、バイデン大統領の発言から受け取れる。

 他方、台湾有事の際に、対ロシアのように中国に経済制裁を科すことがどこまで有効なのかは不透明だ。中国は外貨準備高の3割に当たる約1兆ドルを米国債で保有しており、米欧が資産凍結すれば中国経済は打撃を受ける。ただロシアへの経済制裁で新興国・途上国が一枚岩でなかったように対中経済制裁でも中立を貫く国がある。経済制裁の抜け道を勘案すると中国経済への影響は限定的とみられ、米国が台湾政策で一歩踏み込んだ意義は小さくない。

 米国を脅かす経済大国に発展した中国が台湾侵攻で西側諸国との距離を広げれば、世界経済は大打撃を受ける。台湾有事は決して中国も利さないことを粘り強く訴える必要がある。

(2022/5/25 05:00)

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