産業春秋／五輪から１年、変わらぬ風景

１年前の７月８日。深夜に始まった緊急の記者会見は重苦しい空気に包まれていた。２週間後に迫った東京五輪をめぐり、東京都の小池百合子知事が無観客開催とする方針を公表。「断腸の思い」と述べた。

この時期、東京の新型コロナウイルス感染者は急拡大。８月１３日には感染者が５７７３人に達し、懸念された“第５波”が現実のものとなった。あれから１年。“第７波”への危機感が高まる。

東京都は五輪から１年を迎える２３日、国立競技場（新宿区）で記念イベントを開催する。およそ２万人の観客が見守る中、選手やボランティアたちが応援に感謝するパレードなどを行う予定だ。だが感染状況次第では観客数を制限せざるを得ないかもしれない。

２年半に及ぶコロナとの闘いで私たちはさまざまなことを学んできた。ウイルスは変異を繰り返し感染力が増すこと、人流が活発化すれば感染者数が跳ね上がること。

一方で有効な自衛策の一つがワクチン接種であることも実感した。ただ現在の新規感染者の中心である若者にはこうした意識が十分共有されていないようだ。再び制限下の社会に陥らないよう接種推進を働きかけたい。東京の景色は昨年と変わらない。