産業春秋／列島を脅かした参院選

１０日に投開票された参院選の期間中、全国的にコロナ禍が急拡大したほか、安倍晋三元首相が銃撃されるなど列島を脅かす報道が相次いだ。キーワードが「物価高」から「感染対策」、さらに「民主主義」「言論」へと広がっていった。

選挙戦の序盤、感染対策の論戦は各党とも低調だったが、投開票を目前にコロナ禍は全国で急速に拡大。感染対策と経済活動の両立が、参院選後の政権の喫緊の課題の一つになったのは皮肉な現象だ。

東京都の専門家会議によると、最近の増加ペースが続くと８月上旬には都内の新規感染者数が１日約５万５０００人に達するという。政府は感染対策を自治体任せにせずに指針をまとめ、ウィズコロナを実現したい。

安倍元首相が銃弾に倒れた。選挙戦最終日の９日は厳戒警備の中、各党の党首・幹部は「民主主義を守る」と訴えた。世界で安全な国上位の常連である日本での要人射殺は、海外の日本への信頼にも悪影響を及ぼしかねない。

岸田文雄政権には山積する難題が待ち受ける。感染・経済対策、ウクライナ情勢と東アジアの安全保障、脱炭素とエネルギーの安定供給、そして誰もが安全・安心に暮らせる社会のあり方を問い続けることだ。