(2022/7/11 05:00)
自民・公明両党は10日投開票の参院選で目標だった過半数の議席を獲得した。政権は慢心することなく責任の重さを自覚し、内外に山積する課題に緊張感を持って対峙してほしい。
今参院選は新たな重い課題も投げかけた。安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃され、死去した。民主主義を支える選挙活動・言論を暴力で封殺する蛮行は断じて許されない。安倍氏の死を悼むと同時に、犯行の動機・真相の解明を急ぎ、再発防止に全力を尽くしたい。政治的な意図がある「民主主義への挑戦」だったのか、個人的な怨恨(えんこん)なのか、冷静・慎重にこの事件と向き合っていきたい。
いずれにせよ、世界が分断され、民主主義国陣営が結束を強めようとしている中、銃社会ではない日本で銃を使ったテロという形で言論が脅かされたことに言葉を失う。日本社会の安全・安心をあらためて問い直しつつ、与党には内外の難局にも臨む胆力が求められる。
参院選では第2次岸田政権によるこの8カ月間の実績が一定の評価を得た。だが“第7波”と指摘されるコロナ禍と経済活動の両立、物価高騰、安全保障問題など課題は山積する。
再拡大したコロナ禍に対し、政権は自治体や医療機関任せでない確かな指針を示してもらいたい。また政府は秋の臨時国会で第2弾の物価対策となる2022年度第2次補正予算案を国会に提出する予定だが、財政規律に配慮したメリハリの利いた予算編成を望む。綱渡りの電力事業も電源構成をタブーなしで見直すことを検討したい。防衛費の財源となる「つなぎ国債」の中身も詰める必要がある。
岸田政権は向こう3年間、国政選挙がない「黄金の3年」を迎える。だがウクライナ情勢は長期化し、米中間選挙と中国共産党大会が終わる秋以降、米中の覇権争いが激化しかねない。世界経済の減速、東アジアの安全保障への懸念がつきまとう。他方、自民党の最大派閥を率いた安倍元首相の死により、今後の派閥間争いも想定される。岸田政権が「安定期」に入ったかは、まだ判断できない。
(2022/7/11 05:00)