(2022/7/21 05:00)
歴史的なインフレが主要20カ国・地域(G20)の分断をより鮮明にしている。米欧の金融引き締めにより、新興・途上国は通貨安に見舞われ、海外への資金流出が深刻化しつつある。インフレを助長するロシアへの制裁強化は、新興・途上国にとってこれまで以上に協調するのは難しい。日米欧は国際秩序の再構築を慎重に進めたい。
16日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議は、前回の4月会議と同様に共同声明を出せなかった。中ロや両国と関係の深い国・地域が混在するG20は、インフレ対策などで協調した施策を打ち出せず、機能不全に陥っていることをあらためて露呈した。むしろ先進国の金融引き締めにより自国経済が打撃を受けている新興・途上国との亀裂は深まったように映る。
新興・途上国は自国通貨安と資金流出を抑えるため利上げに動いているものの、米国の大幅利上げで効果は薄められ、通貨安に歯止めがかからない。通貨安は輸入物価を引き上げ、さらなる利上げを迫られる悪循環となる。スリランカのように深刻な債務問題を抱える途上国もある。スリランカをはじめ途上国に多額を融資している中国は債務再編(返済条件の緩和)の要請に反発しており、途上国支援の枠組みが機能不全に陥っている事態を深刻に受け止めたい。
新興・途上国にとって米中経済の行方も気がかりだ。米国はインフレによる景気後退懸念から、5月の実質個人消費支出は前年同月比0・4%減と5カ月ぶりに減少に転じた。中国はコロナ禍での行動規制が響き、4―6月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比0・4%増の微増にとどまった。世界経済の減速、対中貿易の減少が新興・途上国経済の足をさらに引っ張る事態が懸念される。
米欧は金融引き締めを継続しているものの、歴史的なインフレがいつ収束するかは不透明。国際通貨基金(IMF)は世界で景気後退のリスクが高まっているとみる。新興・途上国を西側陣営に取り込む上でも、米欧は物価と同時に景気にも配慮した経済財政運営が求められる。
(2022/7/21 05:00)
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