社説/韓国の対日・対中外交 「徴用工」「チップ4」決断に期待

(2022/8/19 05:00)

韓国政府が日本および中国外交で苦心している。韓国の尹錫悦大統領は元徴用工問題の解決に向け、徴用工がいた日本企業の資産の「現金化」を回避する意向を表明した。韓国政府が徴用工への賠償を肩代わりする案などが想定されている。だが原告の反発は強く、支持率が低下している尹大統領が着地点を見いだせるかは予断を許さない。

他方、米日韓台の4カ国・地域による半導体供給網の枠組み「チップ4」発足に向けた予備会議が月末ないし9月上旬に開かれる予定。韓国は半導体輸出で関係の深い中国を排除する同盟となることを警戒する。韓国政府はどのような解を導き出すのか、「徴用工」と「チップ4」の行方を注視したい。

尹大統領が元徴用工問題で踏み込んだのは、韓国の最高裁が19日にも日本企業の再抗告を棄却し、戦後最悪とされる日韓関係のさらなる悪化を懸念したためと見られる。日本の主権問題と衝突せずに、原告が補償を受けられる案を策定するという。だが原告の反発は強く、日本に謝罪表明などの対応を迫れば軟着陸はできない。日本政府は1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みとの立場で、韓国には毅然(きぜん)とした姿勢で臨んでもらいたい。

元徴用工問題が解決に向かえば、安全保障や経済面で連携を強化できる。7月に行われた日韓の財界会議では、日韓首脳会談の早期開催や日本の対韓輸出規制、韓国の環太平洋連携協定(TPP)加入などが議題となった。日韓の関係改善に向けた韓国の決断に期待したい。

他方、新たな半導体供給網の枠組み「チップ4」構想は、米国主導で実現を目指す中国包囲網と見られている。米国は韓国に参加の可否を月内に決めるよう求めているという。だが韓国にとって中国は半導体の最大の供給国で、中国は米国に傾斜する韓国をけん制する。韓国は近く開く4カ国・地域の予備会議で「特定の国を排除する意思はない」との考えを提示する見通しだ。経済安全保障を確保する上で、韓国が「チップ4」に乗り遅れないと期待したい。

(2022/8/19 05:00)

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